大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和28年(オ)528号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告理由第一点について。

しかし、原審の確定した事実によると、上告会社は本件物品を指定荷受人たる訴外小野田生必組合に引渡さないで荷受人でない訴外小野田紙業有限会社代表者米永喜助に引渡したと言うのである。そして原審認定の諸般の事実関係を考え合せて見ても、未だ上告会社は運送取扱人ないし運送人として法律上必要な注意義務を尽したものということはできない。論旨は独自の見解で採用できない。

同第四点について。

しかし、物品運送の委託について、何人を荷受人に指定するかは発送人の自由である。従て単に取引に関係なきものを荷受人に指定したからとて、それだけでは未だ当然には過失があると断ずることは出来ない。また被上告会社は本件損害賠償請求権の譲受人にすぎないもので、本件運送委託契約の当事者でないことは原判文上明白であるから被上告会社の過失の有無は本件契約の不履行による損害賠償請求権に影響があるものでない。論旨は理由がない。

その他の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例